Miles Davis/’Round About Midnight(1956)


マイルス・デイヴィス/ラウンド・アバウト・ミッドナイト(1956)

基本的にマイルスはどの時代も全部好き。
で、50年代ではこれが一番好き。
これだけ完成度の高いジャズアルバムはそうそうないと思う。
「カインド・オブ・ブルー」は完成度という意味では今一歩の気がする。

選曲、テーマ部のアレンジ、ソロ構成、すべてが考え抜かれていて、ジャズにありがちな冗長な部分がない。

そしてマイルスのソロは音数が少なくて、月並みな表現だが歌手が歌うかのようにフレーズを紡いでいる。
彼はポップスのアルバムとしても聴かれることを意図したのではないだろうか。

そう思っていたところ、次の本を読んで腑に落ちた。

原田和典著「コルトレーンを聴け!」p.34から引用。

名盤ラウンド・アバウト・ミッドナイト制作のウラ側
コロンビアに吹き込みはじめた当初、マイルス・バンドが発表した公式ヴァージョン(マスター・テイクと呼ぶ)のほとんどは、同じ曲を何回も演奏したなかからよい箇所を切り貼りし、つなぎあわせたものである。プロデューサーであるジョージ・アヴァキャンの指示によって、録音エンジニアが編集したのだ。

編集といっても、当時DAWがあるわけもなく、オープンリールを物理的に切り貼りしてブロック編集をしているだけではあるが、当時のジャズアルバム制作では、例外的なことだと思われる。確かブルーノート・レーベルの諸作品でもアルフレッド・ライオンの指示でブロック編集が結構されていたということを聞いたことがある。

ここであげた両者はブロック編集により、ポップス/ロック的なパッケージ化された作品を志向していたといえると思われる。


3.All Of You
コール・ポーターの曲ってコード進行がスムーズでどれもいいんだけど、All Of Youはとくにいいなぁ。これ聴くとちょっと涙がでてくる。
ミディアムスローぐらいのテンポの曲をマイルスがミュートで歌い上げてくれれば、それでいいんです。
ベースがテーマ部、2ビート、ソロに移って4ビートっていうのが、この時代のマイルスのお約束になっているんだけど、いいです。ああ、ボキャブラリーがない。いいしかいってない。


(2018/11/13記)


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